ISOIL for RNA プロトコールの「DNase 処理プロトコール」の代わりに、RNA抽出用試薬ISOGEN II を用いて核酸溶液を精製し、DNAおよび夾雑物の除去を行った。ISOIL for RNAマニュアルに掲載の通常プロトコール(RNA抽出プロトコール+DNase処理プロトコール)では、土壌サンプルの種類によっては(特にアロフェン質黒ボク土において)、夾雑物質が除去しきれず、DNase処理等の酵素反応が阻害されることがある。その場合の対策として、ISOGEN II による精製を追加した方法を検討した。
土壌サンプル(アロフェン質黒ボク土)から、ISOIL for RNAのRNA抽出プロトコールに従ってRNAを抽出し、3通りの精製プロトコールを検討した。
① 通常プロトコール (RNA抽出+DNase処理)
② オプションプロトコール1( RNA抽出+ ISOGEN II 処理)
③ オプションプロトコール2( RNA抽出+ ISOGEN II 処理+DNase処理)
RNA抽出 |
ISOGEN II 処理 |
DNase処理 |
土壌サンプル0.5 g をBeads Tube に入れる ↓←120 µl Sodium Silicofluoride Solution ↓←420 µl Lysis Solution R ↓←300 µl フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール ↓←60 µl Lysis Solution 20S ↓ビーズビーティング(5 m/秒間, 30 秒間) ↓インキュベート(65°C, 2 時間) ↓遠心(12,000 x g, 5 分間, 室温) 水層450 µl を新しい2 ml 容チューブに移す ↓←450 µl Purification Solution R、ボルテックスで混合 ↓←450 µl クロロホルム、ボルテックスで15 秒間混合 ↓遠心(12,000 x g, 20 分間, 室温) 水層650 µl を新しい2 ml 容チューブに移す ↓←650 µl Precipitation Solution R、ボルテックスで混合 ↓遠心(20,000 x g, 15 分間, 4°C) ↓上清を除去し、沈殿を残す ↓←1 ml 70%~80%エタノール ↓←2 µl Ethachinmate、ボルテックスで混合 ↓遠心(20,000 x g, 5 分間, 4°C) ↓上清を除去したあと、沈殿を風乾 沈殿 【ISOGEN II 処理へ】 |
沈殿 ↓←1 ml ISOGEN II ↓ボルテックスで混合 ↓←400 µl RNaseフリー水、激しくシェイクして15秒間混合 ↓室温で10分間放置 ↓遠心(12,000 x g, 15分間, 4°C) 上清~950 µl を新しい2 ml 容チューブに移す ↓←950 µl (上清と等量の)イソプロパノール、転倒混和 ↓室温で10分間放置 ↓遠心(12,000 x g, 10分間, 4°C)、上清を除去 ↓←500 µl 75%エタノール、軽く転倒混和 ↓遠心(7,500 x g, 5 分間, 4°C)、上清を除去 ↓←500 µl 75%エタノール、軽く転倒混和 ↓遠心(7,500 x g, 5 分間, 4°C) ↓上清を除去したあと、沈殿を風乾 ↓←155 µl RNase フリー水で溶解 RNA溶液(155 µl) 【DNase処理へ】 |
RNA溶液(155 µl) ↓←5 µl Deoxyribonuclease(RT Grade) ↓←20 µl 10 x DNase(RT Grade)Buffer ↓←20µl 2 mg/ml BSA Solution ↓ピペッティングで軽く混合 ↓インキュベート(37°C, 15 分間) (以降マニュアル記載のとおり) ↓フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール処理 二回 ↓クロロホルム処理 ↓エタノール沈殿 ↓70%エタノール洗浄 RNA溶液 |
①~③の3通りの精製方法で得られた各4.7 µl のRNA溶液を アガロースゲル電気泳動に供した。
①通常プロトコール (RNA抽出+DNase処理)
②オプションプロトコール1(RNA抽出+ ISOGEN II 処理)
③オプションプロトコール2(RNA抽出+ ISOGEN II 処理+DNase処理)
Lane M:RNA Ladder
①~③の3通りの精製方法で得られたRNA溶液と、10倍希釈したRNA溶液を鋳型にして、RT-PCRを行った(増幅サイズ: 0.5 kb, 1.4 kb)。また、ISOGEN II およびDNase処理の効果を確認するため、逆転写酵素なし(RT-)でのコントロール実験も行った。PCR産物を各3.3 ml アガロースゲル電気泳動に供した。
①通常プロトコール (RNA抽出+DNase処理)
②オプションプロトコール1( RNA抽出+ ISOGEN II 処理)
③オプションプロトコール2( RNA抽出+ ISOGEN II 処理+DNase処理)
増幅サイズ: 0.5 kb |
増幅サイズ: 1.4 kb |
Lane M:OneSTEP Marker 5 Lane 1 : RT- Lane 2 : RT+ Lane 3 : 10倍希釈 RT- Lane 4 : 10倍希釈 RT+ |
Lane M:OneSTEP Marker 6 Lane 1 : RT- Lane 2 : RT+ Lane 3 : 10倍希釈 RT- Lane 4 : 10倍希釈 RT+ |
RT-PCRした結果、0.5 kbの増幅サイズにおいては、コントロール(RT-) の結果から③のISOGEN II 処理およびDNase処理を行う必要があることが分かった。 1.4 kbの増幅サイズにおいては、②のISOGEN II 処理だけで、コントロール(RT-) の増幅を抑えることができた。以上の結果より、アロフェン質黒ボク土のサンプルにおいて、RNA抽出用試薬ISOGEN IIを用いた精製はDNAおよび夾雑物の除去に有効であることが確認できた。