Thermostable β-Agarase

アガロースゲルからの核酸抽出

実験データ一覧

  1. アガロースゲルブロックから回収した DNA 断片の PCR
  2. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片(500 bp)のクローニング
  3. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片(100 bp以下)のクローニング
  4. 分子量の大きいDNA断片の低融点タイプアガロースゲルからの回収
  5. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片の塩基配列解析
  6. 参考資料 「酵素添加量の検討」

Data 1. アガロースゲルブロックから回収したDNA 断片のPCR

EtBr を含む 1% Agarose S / TAE により 200 µg の λ-DNAを電気泳動した。“λ-DNA を含むバンド部分のゲル”と “DNA を含まないウェル上部のゲル”を切り出して、Thermostable β -Agarase を用いてアガロースゲルを分解した。 λ-DNA を含むアガロース分解溶液を 100 pg/µl まで希釈し、PCR の鋳型 DNA とした。また、ウエル上部のアガロース分解溶液を PCR 反応液(50 µl)に対し、1/2倍量,1/4倍量,1/8倍量,1/16倍量を含むように添加し、それぞれ同量(100 pg)の鋳型 DNA で増幅した(1.1 kbp)。

Lane M:Marker 2 (λ/Hind III ・ EcoR I double digest)
Lane 1:Positive control
Lane 2:アガロース分解溶液の持ち込み量 1/2 倍量
Lane 3:アガロース分解溶液の持ち込み量 1/4 倍量
Lane 4:アガロース分解溶液の持ち込み量 1/8 倍量
Lane 5:アガロース分解溶液の持ち込み量 1/16 倍量

結果
アガロースゲル電気泳動写真 Lane 2 と Lane 3 のバンドが Lane 1 のバンドと比べ薄くなっていることから、PCR 反応液中に 1/4 倍量以上のアガロース分解溶液を持ち込むと PCR を阻害すると思われる。また、電気泳動の Buffer を TBE で同様の試験を行ったところ、 TAE と同様の結果であった。
以上の結果より、PCR 反応液に対し、Thermostable β -Agarase を用いたアガロース分解溶液の添加量を 1/8 倍量以下とすることを推奨する。(例: PCR 反応液の容量が 20 µlであれば、アガロース分解溶液の添加量を 2.5 µl以下にする)

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Data 2. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片(500 bp)のクローニング

3% Agarose 21 でλ-DNA 由来のPCR産物(500 bp)を電気泳動し、ゲルブロックとして切り出した。ゲルブロック150 mg を90°C、5分間で完全に融解してから、65°Cまで冷まして、本品6 unitsを添加し、混和後、65°C、10分間でゲルを分解した。1 µl のベクター(3 kbp, 50 ng/µl )に9 µl のDNA溶液(ゲル分解液)を加え Ligation-Convenience Kit を用いてライゲーション反応を行った。ライゲーション反応後、ECOSTMCompetent E. coli DH5α を形質転換し、生じたコロニー数を計測した。対照として、同様に回収した DNA溶液(ゲル分解液)をアルコール沈殿・精製し、得られた沈殿物を150 µl のTE に溶解したDNA溶液を用いた。

結果
ゲルブロックを分解した後のDNA溶液をそのままクローニングに用いた際のクローニング効率は80%で、分解後にアルコール沈殿・精製したDNA溶液を用いた際の効率は85%であった。ゲルブロック分解後のアルコール沈殿・精製の有無によるクローニング効率の差はわずかであった。

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Data 3. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片(100 bp以下)のクローニング

サンプルのDNA断片が100 bp以下の短鎖の場合、一連の操作*においてDNAの一本鎖へ解離が懸念されるため、短鎖DNA断片(100 bp以下)におけるThermostable β -Agarase処理産物に関し、クローニングに対する影響を試験した。

* 一連の操作:スタンダードタイプのアガロースゲルブロックから高温(95°C)でアガロースゲルブロックを融解後、酵素反応(50-65°C)によりアガロースを分解し、氷上にて再凝固しないか確認する操作。

①インサートDNAの調製
Xba I サイトを含むPrimerでλ-DNAを鋳型としたPCR増幅を行った。得られたPCR産物(GC含量44%)をXba Iで消化した(消化産物のサイズ:90 bp)。

②アガロースゲルブロックの切り出し
消化産物をアガロースゲル電気泳動(3% Agarose X : 融点≦ 92°C)を行い、アガロースゲルブロック(160 mg)を切り出した。

③アガロースゲルブロックからの核酸抽出 
アガロースゲルブロック(160 mg)を 2 つに分け(各80 mg)、他社スピンカラムとThermostable β -Agarase を用いて、それぞれDNA溶液を得た。Thermostable β -Agarase処理は、95°C 5分間でゲルブロックを溶解し、 55°Cの恒温槽で5分間静置後、Thermostable β -Agarase 3 units を添加し55°Cで10分間インキュベーションした。その後、氷上にて静置しアガロースが完全に分解したことを確認した。

④クローニング
Xba I で消化し BAP(Bacterial Alkaline Phosphatase) 処理したpUC19をベクターとし、③で得られた各DNA溶液をインサートDNA として、モル比 1:3(ベクター:インサート≒3 ng:0.3 ng )でライゲーション反応(各 n=3)を行い、E. coli DH5α を形質転換して、Blue/White Selection を行った。

結果

ゲル抽出方法 コロニー数(青色) コロニー数(白色) 白色コロニー率(%)
Thermostable β -Agarase 125 789 86
他社スピンカラム 138 786 85

Thermostable β -Agaraseで回収した短鎖DNA(90 bp)を用いてクローニングしても、 他社スピンカラムと比較してクローニング効率に大きな差は見られなかった。 以上の結果より、Thermostable β -Agarase処理の一連の操作において考えられるDNAの一本鎖へ解離は、 クローニング効率に与える影響が少ないと考えられる。

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Data 4. 分子量の大きいDNA断片の低融点タイプアガロースゲルからの回収

1 µgのMarker 8 GTを 0.8% Agarose XPゲルで50V、90分間の電気泳動により分離し、166 kbpから14 kbpまでのDNA断片を含むバンドを250 mgのゲルブロックとして切り出した。65°Cにて5分間保温しゲルブロックを融解してから、本品6 unitsを添加してピペッティングで良く混和した後、さらに60°Cにて10分間保温してアガロースゲルを分解した。得られたDNAをチェックするため、アガロースゲル分解物の一部をそのまま0.3% Agarose Hゲルにアプライし、20V、16時間の電気泳動を行った。

結果
分子量の大きなDNA断片でもThermostable β -Agaraseを用いることで、せん断の少ないDNAを効率よく回収することができた。

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Data 5. アガロースゲルブロックから回収したDNA断片の塩基配列解析

制限酵素消化したプラスミドを1.5% 低融点タイプアガロースゲルで分離した。約0.8 kbのバンドを100 mgのゲルブロックとして切り出し、68°Cにて5分間保温してゲルブロックを融解した。本品6 unitsを添加してピペッティングで良く混和した後、さらに68°Cにて5分間保温しアガロースゲルを分解した。*1得られたDNA溶液(アガロース分解溶液)10µlまたは5µlを市販のSequencing Kitを用いてシークエンス反応に用いた。市販Kitでプライマーを除去した後、減圧乾燥し、サンプルバッファーに溶解して全量を用いて塩基配列の解析(ABI 社製 377 シークエンサー)を行った。対照として、同様に切り出したゲルブロックから市販Kitを用いてDNA断片を精製し、水で溶出回収したものを用いた。

結果
アガロースゲル分解物を精製によって除去しなくても、除去した場合と同等の塩基配列解析結果が得られた。*2

*1 Thermostable β -Agaraseは70°Cで30分間加温しても10%以上活性が維持される。
*2 高濃度・高分子量のアガロース分解物が混入すると、解析機器の機種によっては故障の原因につながる可能性がある。高分子量のアガロースゲル分解物は遠心やフェノール・クロロホルム処理で除くことができる。

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Data 6. 参考資料 「酵素添加量の検討」

Thermostable β -Agarase の基本プロトコールでは、 200 mg(3% アガロース)のゲルブロックに対して酵素添加量は 6 units である。溶解させるアガロース濃度が 3% より低い場合、酵素添加量を減らすことが出来るため、反応コストを下げることが可能である。以下は、弊社製品「Agarose S」を使用した場合の、各アガロース濃度に対する最適な酵素添加量を示した表である。

アガロース : Agarose S
バッファー : TAE および TBE
反応時間 : 5分間
確認方法 : アガロース S を加熱融解後、本品を添加し 65°C, 5分間反応させた。
反応後、反応液を氷冷しアガロースが析出しないことを確認。また、その反応液をエタノール沈殿し、アガロースが析出しないことを確認。

結果
アガロース濃度 酵素添加量
1% Agarose S 2 units
1.5% Agarose S 3 units
2% Agarose S 5 units

 

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