「ISOIL」のプロトコールを改変することでDNAの抽出効率が良くなった例をご紹介致します。
さらに、抽出したDNAを鋳型にPCRでネコブセンチュウの検出を行った実験例もご紹介致します。
「ISOIL」は界面活性剤と熱処理の作用によりDNAを抽出しますが、「ISOIL for Beads Beating」はさらにビーズ破砕を行いますので、DNAの収量という点で両者を比較すると「ISOIL」の方が低くなる傾向があります。
この度、九州沖縄農業研究センター 線虫制御研究室の岩堀様は、「ISOIL」のプロトコールを改変することによりDNAの抽出効率を飛躍的に改善し、さらにそのDNAを鋳型に病害線虫であるネコブセンチュウをPCRで検出することに成功されました。
その改変プロトコールは「ISOIL」のDNA収量を上げる有効な手段であり、さらに「ISOIL」を利用した土壌DNA研究の応用にも期待がもてます。
土壌サンプル(0.5 g)を マイクロチューブに入れる
↓凍結融解処理 (-20゜Cまたは-80゜C, 1時間)、凍結後は室温で融解する
↓←20 mg, スキムミルク(final conc. 4%)
↓←950 μl, Lysis Solution HE
↓←50 μl, Lysis Solution 20S
↓十分に混合する
↓超音波処理 (28KHz, 200W, 3~10分間)
↓インキュベート(65゜C, 60分間) 、10分間隔で転倒混和する
↓凍結融解処理 (-20゜Cまたは-80゜C, 1時間)、凍結後は室温で融解する
↓遠心(12,000 x g, 1分間, 室温)
上清600 μl を新しいチューブに移し、
以降の操作はマニュアルに記載のプロトコール通りに行う
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データ提供 : 独立行政法人 九州沖縄農業研究センター 地域基盤研究部 線虫制御研究室 室長 岩堀英晶様
「ISOIL」を標準プロトコールと改変プロトコールでそれぞれ使用し、抽出できたDNAの量で抽出効率を比較した。その結果、改変プロトコールによりDNAの抽出効率は飛躍的に上がった。土壌サンプルは、九州沖縄農業研究センター内サツマイモ圃場(熊本県菊池郡西合志町)の土壌(黒ボク土)を使用した。
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改変プロトコールにて抽出されたDNAを鋳型にして、九州沖縄地域で主要な3種ネコブセンチュウ(サツマイモ、アレナリア、ジャワ)のミトコンドリア遺伝子を増幅させるプライマーでPCRを行ったところ、他生物のDNAに影響されることなくネコブセンチュウのDNAのみが増幅された。
上記3種いずれかのネコブセンチュウDNAが存在すれば、1.7kbのPCR産物が確認でき(下図左)、 制限酵素Hinf I 処理によってこれらに特徴的なバンドパターンが確認され、種の特定が可能となる(下図右)。
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これらの抽出・検出系におけるネコブセンチュウの検出感度について検討した。土壌サンプルは、九州沖縄農業研究センター内サツマイモ圃場の土壌を1/5,000ワグネルポットに詰め、1作サツマイモを栽培後の土壌を使用した。
その結果、ベルマン法による抽出で約100頭/20g土壌レベルの汚染土壌で、ネコブセンチュウの検出が可能であることが分かった(下図)。
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