Cap Site cDNA®作製の原理


 Cap Site cDNA®は、真核生物のmRNAの5'末端に特徴的に存在するキャップ構造を合成オリゴリボヌクレオチドで置換した後、ランダムプライマーを用いて逆転写反応を行って得た第一鎖cDNAライブラリーである。
 真核生物のmRNAの5'末端はキャップ (m7Gppp) と呼ばれる特徴的構造を持っている。このキャップ構造は転写開始点(transcription start point : TSP, 別名 Cap Siteとも呼ばれている) の塩基に転写後かなり早い段階で酵素的な修飾により形成される。タバコ酸性ピロホスファターゼ(Tobacco Acid Pyrophosphatase : TAP)は、このキャップ構造を特異的に開裂する。そこで、まず高純度に精製したTAPによって、キャップ構造を開裂して生じる5'末端りん酸残基と特別に設計した合成オリゴリボヌクレオチド(rOligo : 注1) を、RNAリガーゼによって連結する。これを鋳型として、ランダムプライマーを用いてM-MLV逆転写酵素によって第一鎖cDNAを合成する1)-5)。このようにして得られたcDNAは、mRNAの5'末端側の情報に富んだcDNAライブラリーである。

作成の原理 : アルカリホスファターゼでリン酸をはずし、TAPでCAPを開裂して、rOligoをつける。

図2 Cap Site cDNA® 作製の原理

 Cap Site cDNA®を用いて高い効率で転写開始点を含む領域をクローニングし、その配列を決定することができる。CapSite® Huntingを行う場合は、Cap Site cDNA®を鋳型として、rOligo相補的配列部分に特異的なプライマー (添付) と解析したい目的遺伝子に特異的なアンチセンスプライマーを用いてPCRを行う。ゲノム解析における発現遺伝子の転写開始点のマッピングや正確なコーディング領域の決定に有効な方法である。

注1) rOligoの配列
rOligoの配列は、特異性の高いPCRを行うために、以下の点を考慮して設計した。
1) cDNAの配列に出現する頻度の少ない配列であること。
ある配列がcDNA中にどの程度の頻度で出現するかを予想することは容易でなく、RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)解析に用いられる10merの配列なども経験的に決定されている。そこで、ニッポンジーンでは、次のような基準に基づいて450本の10merを設計した。
・GC含量が50%であること。
・3'末端がGまたはCであること。
・2塩基以上のパリンドローム配列を持たないこと。
真核生物の配列データ中の出現頻度を、ギャップを考慮したホモロジー検索法で得られたスコアから算出し、450本を出現頻度の低いものから順に整列させた。この結果から、出現頻度が低いと思われる配列を選んだ。
2) T4 RNA リガーゼによって、効率よく5'末端りん酸残基と結合する3'末端を持つこと。
3'末端配列の異なるオリゴリボヌクレオチドを合成し、実際にRNAリガーゼによってTAP処理後のmRNAと連結し、その効率の高い配列を選んだ。
3) nested PCRが行えること。
互いに重複する3本程度のプライマーが設計できる長さを選んだ。

[参考文献]

1) Maruyama, K. and Sugano, S. : Gene, 138, 171-174(1994)
2) 丸山和夫, 菅野純夫 : 実験医学, 11(18), 2491-2495(1993)
3) 丸山和夫, 菅野純夫 : バイオマニュアルシリーズ2 (実験医学別冊)「遺伝子ライブラリーの作製法」(羊土社), 106-123(1994)
4) 鈴木穣, 菅野純夫 : 蛋白質 核酸 酵素, 41(5), 603-607(1996)
5) Schaefer, B. C. : Anal. Biochem., 227, 255-273(1995)

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