ISOHAIR使用例 (ヒト毛髪からのDNA抽出)


1. ミトコンドリアDNAの検出

ISOHAIRを用いて、A、B、C 3人の毛根部1cmまたは毛幹部6cmよりDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量を使用して、ヒト ミトコンドリアDNA(D ループ領域;280 bp)をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。

Human mtDNA M : Marker5 (φX174/Hinc II)
3% Agarose21

2. p53遺伝子の検出

ISOHAIRを用いて、毛根部1cmよりDNAを抽出した。
得られたDNAの1/4量を使用して、ヒト p53遺伝子(exon2〜11)をp53 Primer にて増幅し、電気泳動を行った。

Human p53-e2-11

lane 1 : exon 2, 3 (356bp)
lane 2 : exon 4 (413bp)
lane 3 : exon 5 (308bp)
lane 4 : exon 6 (275bp)
lane 5 : exon 7 (439bp)
lane 6 : exon 8, 9 (445bp)
lane 7 : exon 10 (279bp)
lane 8 : exon 11 (265bp)

M : Marker5(φX174/Hinc II)
3% Agarose21

ISOHAIRを用いて、毛根部1cmまたは毛幹部6cmよりDNAを抽出した。
得られたDNAの1/4量を使用して、ヒト p53遺伝子(exon11)をsemi-nested PCR(first PCR産物 1296 bp、second PCR産物 265 bp)にて増幅し、電気泳動を行った。

Human p53-e11 M : Marker4(φX174/Hae III)
3% Agarose21

ヒト p53遺伝子を増幅したfirst PCR産物を用いてサイクルシークエンスを行ったところ、毛根部、毛幹部ともにシークエンスすることができた。

3. MCT118型検査

MCT118座位は、第1染色体短腕部末端に位置する16塩基を繰り返し単位とするVNTR(variable number of tandem repeat)であり、個人によって繰り返し数が異なることを利用して、法医学資料からの個人識別などに用いられている。

ISOHAIRを用いて、A、B、C 3人の毛根部6cmよりDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量を使用して、MCT118座位をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。

Human MCT118-1 M : Marker5(φX174/Hinc II)
3% Agarose21

ISOHAIRを用いて、父、母、子(1)、子(2)、他人の各々の毛根部1cm×2本よりDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量を使用して、MCT118座位をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。

Human MCT118-2 M : Marker5(φX174/Hinc II)
3% Agarose21

4. T4 gene 32 proteinを用いたPCR阻害の緩和

毛髪から抽出したDNA溶液が、茶褐色や黒色に着色していることがある。これは15cm以上の長い毛髪の毛先部や脱色された毛髪において特に顕著である。着色の原因物質は毛髪に含まれている色素メラニンであると考えられ、PCRを阻害することが報告されている。

ISOHAIRを用いて、毛髪よりメラニンを多く含むと思われるDNAを抽出した。
既にPCRによる増幅が確認されている(lane 1)反応混合液に、得られたDNAの1/20量を添加したところ増幅しなかった(lane 2)。そこで、さらにT4 gene 32 proteinを添加したところ増幅した(lane 3)。また、得られたDNAをテンプレートとして、ヒト ミトコンドリアDNA(280 bp)のPCRを行ったところ増幅しなかった(lane 4)が、T4 gene 32 proteinを添加したところ増幅した(lane 5)。

T4gene32p lane 1 : ColE1をテンプレートとした900bpの増幅
lane 2 : lane 1+毛幹部6cmより抽出した、メラニン を多く含むDNA1/20量
lane 3 : lane 2+T4 gene 32 protein ( 2µg )
lane 4 : 毛幹部6cmより抽出した、メラニンを多く含 むDNA1/20量をテンプレートとしたヒトミ トコンドリアDNA (280bp)の増幅
lane 5 : lane 4+T4 gene 32 protein ( 2µg )

<参考データ>

次に、メラニン量とT4 gene 32 proteinの添加量の関係について例を示した。
T4 gene 32 proteinによるメラニンのPCR阻害の緩和について上記で示したが、T4 gene 32 protein自身も、過剰量添加することにより、PCR阻害を引き起こす。
また、メラニン含量が非常に高い場合、T4 gene 32 proteinを添加しても、阻害を緩和することができないことが予想される。

メラニン

M : Marker 2 ( λ/Hind III・EcoR I double digest)
0.8% Agarose S

5. 毛髪から得られるDNA量

ISOHAIRを用いて、A、B、C 3人の毛根部または毛幹部よりDNAを抽出し、電気泳動を行った。個人によって、あるいは同一人物でも毛髪によってDNA量に差があることが認められた。
抽出されるDNA量は、アガロース電気泳動の結果より、毛髪1本あたり毛根部では約0.5 µg、毛幹部では、ごく微量で電気泳動で検出できないことから10 ng以下であると思われる。

DNA量個人差

*lane 1, 2, 7 の下部のバンド(矢印の位置)はRNAである。

lane 1 : A 毛根部 1cm
lane 2 : A 毛根部 1cm×5本
lane 3 : A 毛幹部 6cm
lane 4 : A 毛幹部 18cm
lane 5 : A 毛幹部 36cm
lane 6 : B 毛根部 1cm
lane 7 : B 毛根部 1cm×5本
lane 8 : C 毛根部 1cm
lane 9 : C 毛根部 1cm×5本

M : Marker 2 (λ/Hind III ・EcoR I double digest)
0.8% AgaroseS

6. 毛髪の部位とDNA量

毛幹部からDNAを抽出する際、毛髪の長さが同じでも、部位によって収量に差が認められる。
ISOHAIRを用いて、全長45cmまたは11cmの毛髪の毛根部から0〜6cm、6〜12cm、12〜18cm、18〜24cm、24〜30cm、30〜36cm、36〜42cmの部位よりDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量を使用して、ヒト ミトコンドリアDNA(D ループ領域;280 bp)をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。
毛根部により近い部位の方が増幅量が多く、試料に含まれるDNAが多いと思われる。

DNA量部位差

7. 脱毛後の時間経過とDNA量

毛髪から回収できるDNA量は、毛髪が抜けた後、時間の経過とともに徐々に減少していく。
ISOHAIRを用いて、抜いた毛髪の毛幹部4cmを76日、57日、31日、0日放置したものからDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量を使用して、ヒト ミトコンドリアDNA(D ループ領域;280 bp)をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。
脱毛後時間が経っていないものの方が増幅量が多く、回収率が高い、あるいはPCR阻害物質の溶出が少ないと思われる。

DNA量時間差 M : Marker 5 (φX174/Hinc II digest)
3% Agarose21

8. PCR条件

毛髪から抽出されるDNAは非常に微量であるため、再現性の高いデータをとるためにはPCRの反応条件に細かな配慮が必要である。
ISOHAIRを用いて、毛根部1cmまたは毛幹部6cmよりDNAを抽出した。得られたDNAの1/4量をテンプレートとし、20merまたは30merのプライマーを用いて、ヒト ミトコンドリアDNA(D ループ領域;280 bp)をPCRにて増幅し、電気泳動を行った。
プライマーを20merから30merに伸ばすことにより、非特異的な増幅が抑えられた。

PrimerLength M : Marker 5 (φX174/Hinc II digest)
3% Agarose 21

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