Ethachinmate の実験例

  1. 微量核酸の回収
  2. 酵素反応に及ぼす影響
  3. Transformation, in vitro packaginigに及ぼす影響
  4. モノヌクレオチドの挙動
  5. Poly(A)+ RNAの回収(エタノール沈殿の際のEthachinmateの効果)
  6. Real-time PCR におけるEthachinmate の影響について

1. 微量核酸の回収

 λ/Hind III(10ng/500µl)を0.1 mol/l酢酸ナトリウム存在下にて1 mlのエタノールを加え、沈殿させた回収DNAをアガロースゲル電気泳動した。

Lane 1とLane 2はっkりバンドが分かる
  • Lane 1 : λ/Hind III(control)
  • Lane 2 : λ/Hind III+Ethachinmate 3µl(ただちに遠心)
  • Lane 3 : λ/Hind III−20°C, over night
  • Lane 4 : λ/Hind III−80°C, 20分間

 以上の結果から、0.1 mol/l酢酸ナトリウム存在下でEthachinmateを添加すると低温保存をしなくても微量DNAが定量的に回収できることがわかった。

2. 酵素反応に及ぼす影響

(1) 制限酵素とT4 DNA Ligase

 Ethachinmateの存在下で、λDNAを制限酵素とT4 DNA Ligaseを用いて切断-連結-再切断した。反応液は10µlあたり1µlのEthachinmateを含み、各酵素の反応条件は本誌記載の酵素反応条件に従った。
Enzyme Hae III Hind III
Ethachinmate - + - +
Result 切断、再切断ともに正常 切断、再切断ともに正常、しかも量が多い 切断、再切断ともに正常 切断、再切断ともに正常、しかも量が多い
  • Lane 1 : 制限酵素による切断
  • Lane 2 : T4 DNA Ligase による連結
  • Lane 3 : 制限酵素による再切断
 
以上の結果から、制限酵素とT4 DNA Ligaseの反応は、Ethachinmate存在下でも影響を受けないことがわかった。

 

(2) 逆転写酵素

Ethachinmateの存在下で、AMV Reverse Transcriptase(RTase)を用いて、鋳型poly(rA)・(dT)12-8へ[3H]dTMPを取り込ませた。反応は50µl(50 mmol/l Tris-HCl(pH8.3), 6 mmol/l MgCl2, 40 mmol/l KCl, 0.5 mmol/l[3H]dTTP, 0.4 mmol/l poly(rA)・(dT)12-8, 5 units AMV RTase)、42°Cで行った。
逆転写グラフ、合成反応の結果に差はない
RTase Ethachinmate
10µl
凡例1 : 白丸
0µl
凡例2 : 黒丸
5µl
凡例3 : 白四角
10µl
凡例4 : 黒四角

以上の結果から、AMV Reverse Transcriptaseによる合成反応は、Ethachinmate存在下でも影響を受けないことがわかった。

 

(3) Taq DNA Polymerase

Ethachinmateの存在下で、約600 bpのDNA領域をTaq DNA Polymeraseを用いて増幅した。

反応は、25µl(TAPS-HCl, pH9.3, 50 mmol/l KCl, 2 mmol/l MgCl2, 1 mmol/l 2-メルカプトエタノール, 0.01% ゼラチン, 200µ mol/l dNTPs, 0.2M プライマー, 1.25units Taq DNA Polymerase)で、94°C 1分間、55°C 2分間、72°C 1分間を25サイクル行った。

泳動結果はどれも同じ
  • Lane 1 : Ethachinmate 0 µl
  • Lane 2 : Ethachinmate 0.2 µl
  • Lane 3 : Ethachinmate 0.5 µl
  • Lane 4 : Ethachinmate 1 µl
  • Lane 5 : Ethachinmate 3 µl
  • Lane 6 : Ethachinmate 5 µl
以上の結果から、Taq DNA Polymeraseによる合成反応は、Ethachinmate存在下でも影響を受けないことがわかった。

 

3. Transformation, in vitro packaginigに及ぼす影響

EthachinmateによるTransformation効率およびin vitro パッケージング効率への影響を以下のような方法で検討した。

(1) Transformation反応*1)

Competent E. coli JM 109(100µl)を氷中にて融解
↓←pBR322 DNA 0.1ng, Ethachinmate
氷中にて20分静置

熱処理(水浴, 42°C, 45秒)後、氷中にて2分以上静置

全量を400µlのHi-Competence Brothを含む試験管に移し、37°Cにて60分振とう

LBプレート(100µg/ml:アンピシリン)に塗布し、37°Cにて一晩静置

*1) ニッポンジーンTransformation Kit JM109(Code No. 319-01321)を使用した。

 
形質転換グラフ、グリコーゲンを入れると効率は大幅に低下するが、Ethachinmateはほとんど影響しない
-形質転換効率への影響-

(2) in vitro パッケージング反応*2)

Packaging Extract (Yellow tube)を氷中にて融解
↓←λDNA 0.2µg, Ethachinmate
室温(約22°C)にて1時間放置

Phage Bufferを1 ml加え、穏やかに混合

軽く遠心して残渣を落とした後上清をとって適当に希釈し、ファージのtiterを測定

*2) ニッポンジーンIn vitro Packaging Kit LAMBDA INN(Code No. 317-01741)を使用した。

 

Packagingグラフ、in vitro packagingにはやや影響がある
-in vitro パッケージング効率への影響-

以上の結果から、Ethachinmateは、ニッポンジーンTransformation Kit JM109による大腸菌の形質転換に対して影響はないが、ニッポンジーンIn vitro Packaging Kit LAMBDA INNによるλファージのin vitro パッケージングに対して効率を若干低下させることがわかった。

 

4. モノヌクレオチドの挙動

Klenow Flagment、ランダムプライマー、[α-32P]dCTPを用いてλDNAの標識反応を行い、経時的にサンプリングし、12.5ng/mlになるように希釈後、その200µlに3 mol/l 酢酸ナトリウム 20µlおよびEthachinmate 2µlを加えてエタノール沈殿(Ethanol ppt.)して得られた沈殿の放射能を同量のトリクロロ酢酸不溶性沈殿(TCA ppt.)の放射能と比較した。

Ethachinmate+酢酸ナトリウムはTCA不溶性沈殿と同じ挙動
TCA ppt. 凡例1 : 黒丸
Ethanol ppt. Ethachinmate Sodium Acetate
凡例2 : 白丸
凡例3 : 黒三角
凡例4 : 白三角

以上の結果から、上記条件で行ったエタノール沈殿が、TCA不溶性沈殿と同様の挙動を示したことから、塩存在下でのEthachinmate添加によりλDNAは定量的に回収され、DNA標識などにおける未反応のdNTPs除去に有効であることが示唆された。

 

5. Poly(A)+ RNAの回収(エタノール沈殿の際のEthachinmateの効果)

 Total RNA 150 µg(ISOGENで抽出)を用いて、Poly(A)+ RNAを精製した。エタノール沈殿により濃縮し、得られたPoly(A)+ RNAの収量を260 nmの吸光度を用いて測定した。

試料 Total RNA量 回収したPoly(A)+ RNA量
Ethachinmate : 有 Ethachinmate : 無
Mouse Brain
150 µg
6.6 µg
5.3 µg
Mouse Kidney
150 µg
6.1 µg
4.7 µg
Mouse Liver
150 µg
5.9 µg
4.7 µg
Mouse Testis
150 µg
5.4 µg
5.2 µg
Mouse Thymus
150 µg
5.4 µg
4.4 µg

 

6. Real-time PCR におけるEthachinmate の影響について

 Ethachinmate が定量PCR の結果に影響を与えるかどうか確認した。

<実験条件>
  18S rRNA Control Kit (FAM-TAMRA) (Eurogentec:RT-CKFT-18S)を使用し、以下の条件でReal-timePCR を行った。

Template:
30 ng/µl Human chromosomal DNA(30000pg、3000pg、300pg、30pg)
Primer:
18S primer mix(final 300nM)
Probe:
18S FAM-TAMRA probe (final 100nM)
定量PCR 試薬:
qPCR Mastermix Plus Low ROX(Eurogentec:312-80431)
PCR volume:
20μl
装置:
ABI 7500 Fast Real-Time PCR System
PCR condition:
95℃ 10 min.→(95℃ 15 sec.→60℃ 1 min.)×40
条件①:
キット付属のTemplate を希釈した。
条件②:
Template 100μl に2μl のEthachinmate を添加してエタノール沈殿を行い、100μl のTEに溶解して、①と同様に希釈した。
条件③:
①と同じTemplate を使用した。ただし、反応系につき1μl のEthachinmate を添加した。

<結果>

図1.Amplification plot(増幅曲線)
   
図2.検量線

<結論>

Ethachinmate を添加した条件②および③とEthachinmate 未添加の条件①を比較したところ、得られたAmplification plot(図1)にはほぼ差が認められず、いずれのTemplate 濃度においても同様の増幅が確認された。また、各条件の検量線の傾き(図2)もほぼ同じと判断された。条件③は、PCR 反応液(20μL)にEthachinmate 1μl を添加しており、通常想定されるEthachinmate の使用方法から考えると、持ち込み量が極めて多い条件となっている。この条件③においても、条件①との傾きの差は極めて小さかった。

以上の結果から、鋳型となる核酸の精製にEthachinmate を使用した場合においても、Real-time PCRに与える影響は極めて少ないか、ほとんどないと考えられる。また、条件①と②の差がほとんどないことから、Ethachinmate による効率の良い核酸回収能力も確認された。

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